■ 音のエネルギーと《dB》という単位について ■
音量を表すデシベル(dB)という単位は、
対数を基にしています。
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例えば、「ささやき声」の音のエネルギーを"1"とすると「自動車のクラクション」は、その1万倍のエネルギーで発せられています。
■ このエネルギーの幅を対数にすると、
《 log( 10000 / 1 )= 4 》となります。( 4桁差 )
これで 「1から10000」の幅が[ 1から4 ]の間で収まりますが、これでは間隔が狭すぎて大雑把です。
そのため、この値に20を掛け、両者の幅を1から80としたものがdBです。
《dB》で表現すると、音のエネルギーとしての「1から10000」の幅を 「1〜80」の間に収める事ができます。
[1から100位]までの幅は、感覚的にも適切な幅ですが、
この「dB」を足し引きする時に誤解が生じます。防音性能 20dBの防音材があるとします。
これは、100dBの騒音を80dBに低減できる防音材ということです。《 dB的には、-20の能力 》ですが、
《 音エネルギーとしては、1/10に低減できる能力 》です。
これを2枚重ねにするとどうなるでしょうか?
《 音のエネルギーとしては、1/20に減少 》する事になりますが、
《 dB的には、-26の能力 》と表されます。
【 防音性能:26dB 】
《 実際のケース 》
防音性能:30dBの壁があるとします。
100dBの騒音が70dBになったという事は、
《 音のエネルギーとしては3/100に減少した事 》になります。
この壁に《 防音性能 17dB 》の遮音シートを貼った場合、
どうなるでしょうか?
《 答えは 》
-32dBになります。
音のエネルギーとしては2.5/100に減少した事になります。
30dBの壁が2枚重なったとしても
《 dB的には、-6の向上 》であり、-36dBとなります。
dBを足し算できるのは、下図のように2層で隔てた構成の場合です。
《 [ -20dB ]+[ -20dB ]= -40dB 》
遮音材の間で [ 反響が起こりにくい程度の ”充分な空気層 ” ] がある場合、dBを足し算する事ができます。
充分な空気層の例として、学校の廊下が分かりやすいです。教室の北側には、おもに廊下があります。 その廊下の幅は、1.8m〜2.0m位です。この廊下が空気層となり、外部の道路からの音は、教室にはあまり入ってきません。
その他の例としては、大型量販店やデパートなどの入り口の2層になった風除室があります。
風除室は、風の進入を防ぎ、空調された室内の空気を外に逃がさない為のものですが、構造上、防音の為の空気層にもなっています。
■ 空気層と防音性能 [ ガラス窓の場合 ] ■
防音材の間に 充分な空気層 を取る事で質量則以上の防音性を得る事ができます。
ただし、空気層の厚さが充分ではない場合、内部反響により防音性は質量則を下回ります。
充分でない空気層の例としては、ペアガラス(複層ガラス)が上げられます。
ペアガラスの種類はいろいろありますが、 一般的な [ 3ミリ厚ガラス + 空気層6ミリ + 3ミリ厚ガラス ] の 防音性は、[ 6ミリ厚ガラス 1枚 ] よりも劣ります。これは、空気層が 「空気ばね」となって太鼓のようにガラス面が振動し音が透過しやすくなるためです。
※この現象は、厚いペアガラスでも起こります。
同質量、
[ 10ミリ厚 単板ガラス ] と [ 22ミリ厚 ペアガラス ] の
遮音性能の比較このように空気層の厚さが不充分な場合、
防音性は質量則を下回ります。
2重サッシでも空気層が充分に取れない場合、
同じような現象が起こります。2重サッシ(FIX窓[はめ殺し窓])と単板ガラス10ミリ厚の
遮音性の比較サッシのスキマがない FIX窓(開閉できない窓)で比較しています。
※引き違い窓の場合では、戸当りや召し合わせ部分からの音漏れにより
高音域の防音性が低下します。
- 参考資料 [低音と高音の伝わり方の違い] -
窓を透過する音の3次元メッシュ表示
《 音響インテンシティ測定 》
測定対象 :普通アルミサッシ[引き違い] ガラス厚:5mm
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低〜中音域の音は、透過力が強いため
ガラス面全体を押すように透過してきます。 -
高音域の音は、
透過力が弱いためガラス面では相当量が減衰し、
相対的にサッシのスキマからの侵入割合が大きくなります。